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東京はホールド、大阪と名古屋については売り気配が先行中――コロナ本格反映の「地価LOOKレポート」

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文/朝倉継道 イメージ/©︎nelson99・123RF

衝撃の結果 上昇地区が73からたったの「1」へ 

8月21日、国土交通省より今年2度目の「地価LOOKレポート」が公表された。令和2(2020)年第2四半期(4月1日~7月1日)の地価動向を示す公的指標である。

地価LOOKレポートは年に4回公表されている。前回は第1四半期分で期間は1月1日~4月1日。よって、今回からが新型コロナウイルスの影響が本格的に反映されたものとなっている。内容はまさに激変。

「上昇」区分の地区 …前四半期の73地区から1地区に減少
「横ばい」区分の地区 …同じく23地区から61地区に増加
「下落」区分の地区 …4地区から38地区に増加

近年続いてきた国内地価上昇の傾向に、完全に歯止めがかかった。用途別に見てみる。

住宅系地区(全32地区)
上昇 …0地区(前回 23)
横ばい …27地区(前回 8)
下落 …5地区(前回 1)

商業系地区(全68地区)
上昇 …1地区(前回 50)
横ばい …34地区(前回 15)
下落 …33地区(前回 3)

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商業施設や店舗の収益性の低下が地価を押し下げる

ここで目をひくのは、やはり商業系地区での下落数だ。今回のレポートでは、「平成23(11)年第4四半期以来となる、3%以上の下落地区が生じた」こともトピックとなっている。その「顔ぶれ」を見ていこう。

・東京 新宿区 歌舞伎町
・東京 台東区 上野
・金沢市 金沢駅周辺
・名古屋市 中区 栄南
・大阪市 北区 茶屋町
・大阪市 中央区 心斎橋
・大阪市 中央区 なんば
・神戸市 中央区 三宮駅前


「商業系地区」で下落した歌舞伎町/©︎cittadinodelmondo・123RF

東京の2地区や、大阪の心斎橋、なんばといったところでは、インバウンド(訪日外国人客)の激減による影響が色濃くうかがえる状況だ。その他の地区においても、外出自粛などによる商業施設や店舗の収益性の低下が、地価を押し下げていることが明白である。

気になる東京、大阪、名古屋のコントラスト

加えて、気になる点は東京、大阪、名古屋、三大都市圏のコントラストだ。ちなみに、冒頭に記した唯一の「上昇」商業系地区は、宮城県仙台市の「中央1丁目」。そのため、東京圏、大阪圏、名古屋圏ともに、上昇地区は存在しない。その内訳はどうか。

[東京圏]
横ばい …38地区
0%超3%未満の下落 …3地区
3%以上6%未満の下落 …2地区

[大阪圏]
横ばい …8地区
0%超3%未満の下落 …13地区
3%以上6%未満の下落 …4地区

[名古屋圏]
横ばい …0地区
0%超3%未満の下落 …8地区
3%以上6%未満の下落 …1地区

このように、上昇地区はなくなっても、横ばいが大きな割合を占める東京圏に比べ、下落地区が全体の半分以上を占める大阪圏、全地区が下落の名古屋圏の対比が目立つ格好となっている。すなわち、投資言葉でいうならば「東京はホールド、大阪と名古屋については売り気配が先行中」といったところか。

事前に予測されてはいたが、新型コロナウイルスの影響は、日本の地価にもはっきりと影響を及ぼし始めている。ただし、国交省は今回のレポートにこんなコメントを添えている。

「リーマンショック時の地価下落の主因となった、マンションやオフィスの需給バランスに大きな変化は見られていない」

さらにこうした見方も記している。

「需要者の様子見など取引の停滞が広がる(状況が見られる)」

いずれも「まさに」、といったところか。

さて、後回しになってしまったが、この「地価LOOKレポート」のあらましを紹介したい。正式名称は「主要都市の高度利用地地価動向報告」。

「主要都市における地価動向を先行的に表しやすい高度利用地等の地区について、四半期ごとに地価動向を把握することにより、先行的な動きを明らかにする」と、いうことで、年4回発表されることによるライブな現状報告と分析が、このレポートの魅力となっている。

ただし、調査範囲は限られている。「三大都市圏、地方中心都市等の高度利用地における、高層住宅等や店舗、事務所等が高度に集積している高度利用地等」だ。また、土地価格そのものが示されるわけではない。いわば、都市部に限っての“地価の方向性を割り出すトレンド調査”といえるものが、この地価LOOKレポートなのである。

特徴としては、地価の動向を示す9種類の矢印や、多用される表や地図により、内容が把握しやすい点が挙げられる。また、調査対象全地区につき、不動産鑑定士による具体的なコメントも添えられているので、それぞれの場所の実情を理解するうえで大きな助けとなる。

周知のとおり、わが国には、マスメディアも大きく採り上げる3つの公的地価調査がある。すなわち、公示地価、路線価、基準地価である。地価LOOKレポートは、これらに続く第4の公的指標として、主にプロ(業界関係者)が注目している。

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